翻訳
異なる言語間で意味を翻案するなかで、特に記述された文章を他言語で記述する作業を翻訳と呼ぶことが多い。一方、話し言葉(音声言語)を別言語に置き換える作業は通訳と呼ばれる。
専門用語をはじめとして、翻訳には専門知識が必要とされることが多く、多くの翻訳家 は専門の分野に特化している。例えば、契約書の翻訳においては関連する法令に通じている必要があり、自然科学系の翻訳においても各分野特有の用語や先端知識に通じている必要がある。このように付随する知識が必要な分野では需要が高くなる。特許や仕様書、マニュアルといった技術情報を翻訳する、いわゆる技術翻訳と呼ばれる分野に携わる者は、翻訳家と呼ばずに 翻訳者 と呼ばれることがある。
翻訳はA言語からB言語へその言語間で対応する語彙を用い、対応する文法を用いて翻案することが多い。しかし、それだけでは成り立たない場合、文章中の個々の単語の対応にこだわらず、意味だけを移す作業が行われる。これが、意訳と呼ばれるものである。なお、翻訳によって誕生した文学作品のことを翻訳文学と呼ぶ。
このような両言語から対応する語句を選定する作業において、単語は言語間で一対一対応をしているとは限らないことが大きな問題となる。つまり、言語A では一語で表される概念が、言語B では複数の語(複数の概念)にまたがっていることが問題となる。これは、文学作品でのニュアンスや語感の再現や、言語による色の表現などで顕著になる問題である。
例えば、虹の色ですら、日本で7色にわけるのに対し、他国ではもっと少ない色数である。また、日本語で "青" と呼ばれるものに緑色の植物や信号灯が含まれるのも、単純に単語を置き換えることができない顕著な例である。このような一対一対応がないという問題は、機械翻訳の実現が単なる単語の差し替えでは不十分であることにもつながっている。
また、A言語からB言語へ直接翻訳を行うことが何らかの事情により困難な場合には、重訳という手段がとられることがある。A言語→X言語→B言語、という風に、いったん他の言語に翻訳された版を参照し、さらに他の言語へ重ねて翻訳する方法である。たとえばアラビア語文学作品の日本語版を出版する際に、まずアラビア語の原書から翻訳された英語版があり、その英語版をもとに日本語版に翻訳する(アラビア語原書→英訳、英訳→邦訳)というような具合である。
これによって、直接原書(アラビア語)を読めなくても他言語を介することで翻訳することが可能ではある。しかし、先の概念の一対一対応がないという問題もあり、伝言ゲームのように誤訳や概念の解釈の相違が重なって、原語に記されていた概念からかけ離れた単語に翻訳される危険性をはらんでいる。

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